キャリアに悩むサラリーマンが「転職の思考法」を読んだら光が差した②~仕事はライフサイクル編~

転職

2018年6月に出版された「転職の思考法(著者:北野唯我氏)」を読みました。数々の共感や気づき、感動がありました。そして、何度も何度も心を抉られました。感想を述べずにはいられませんので、何回かに分けて記したいと思います。
本書は、転職を希望している人だけではなく、私のように出世コースから外れたり、今の仕事に悩んでいたりと、現職に不安や不満を持つ人にもおすすめの内容です。モヤモヤとした心が晴れ渡り、びっくりするほど光明が差し込みます。本書を読めば、自分自身の「働く」ということに対する価値観を見つめなおし、再定義することもできると思います。

本書は、30歳の平凡な会社員である青野氏と敏腕コンサルタントである黒岩氏による掛け合いがメインでストーリーが展開されます。その中に出てくる黒岩氏の言葉にハッとさせられるのです。
この先はネタバレになりますのでご注意ください。

以下は前回書いた記事です。「転職とは初めての意思決定」とはどういうことなのかを解説しています。


2回目の今回は「仕事はライフサイクル」をテーマに感想を述べます。

仕事とは生まれては消えを繰り返す「ライフサイクル」

黒岩氏の言葉です。

そもそも仕事とは生まれて、消えるものなんだ。例えばプログラミングという技術は、100年前には存在しなかった。あるいは、広告代理業の仕事は、新聞や雑誌の印刷技術の発展によって生まれた。そして新聞や雑誌の発行部数が減るにつれて、今まさに紙の広告代理業は消えつつある。このように、仕事とは生まれては消えを繰り返している。これが「ライフサイクル」だ

例えとしてカメラ市場を見てみます。富士フィルムが使い捨てカメラ「写ルンです」を1986年に発売し、90年代に大ヒットしました。しかし、2000年代にはデジカメが大衆にも手の届く価格帯となり、「写ルンです」に代わり市場を席巻。「写ルンです」はひとまずライフサイクルの終焉を迎えます。2000年代も後半になると、高機能カメラを搭載したスマホが発売され、デジカメの出番も急激に減少します。

最近では、「写ルンです」は若者を中心にブームが再来。デジカメも一眼やミラーレスなど本格志向で生き残りをかけています

このように、資本主義社会ではライフサイクルは必然と起こるものであり、商品だけではなく、仕事や業務においても同様のことが言えます。PCの無かった時代って、どうやって仕事をしていたんだ?と普通に疑問に思ってしまいますよね。PCの無かった時代の仕事のやり方は、今では当然のごとく衰退したわけです。

PCが無かった時代の仕事の生産性は想像を絶しますね

仕事で大切なのはポジショニング

仕事はライフサイクルで栄枯盛衰を辿ることは分かりましたが、では、どのような環境で仕事をすれば良いのかということになります。このことについても黒岩氏が説明しています。

伸びている産業で働くというのは、例えるなら、上りのエスカレーターに乗って、上を目指しているようなものだ。とくに自分が何もしなくても、売上が1.5倍になったりするわけだからな。一方で、縮小している産業で働くのは悲惨だ。何もしなければ、売上が0.8倍になる。それを必死に防ぐために、下りのエスカレーターを速いスピードで逆向きに駆け上がらないといけないからな

どのような環境で仕事をすべきかについては、単純に右肩上がりの産業だと述べています。黒岩氏はもう少し詳しく説明しています。

技術資産も人的資産もない人が会社を選ぶ際は実質二択だ。ひとつは生産性がすでに高い産業。もうひとつはエスカレーターが上を向いている産業だ。反対に絶対にダメな選択肢は、生産性が低くて、かつ、成長が見込めない産業で働くことだ。永久に豊かにならない

黒岩氏の説明は分かりやすいのですが、果たしてコロナ禍においても生産性が高い産業はどこなのか?伸び盛りの産業はどこなのか?一方で、コロナ禍で下火となっている企業はどこなのか?をしっかり見極めることが大切です。さらには、コロナ後のニューノーマルの世界において、より良い産業はどこなのか?まで思考を巡らす必要があると思います。

成功した人間のうち、いくらかの人は、とりあえず目の前のことを頑張れ、と言う。これはある側面では正しい。ただそういう人のキャリアを注意深く分析すると、結局、才能とタイミングにたまたま愛された人間であることがほとんどだ。つまり、再現性がない。特別な才能を持たないほとんどの人間にとって、重要なのは、どう考えても、どの場所にいるか。つまりポジショニングなんだ。そしてポジショニングは誰でも平等だ。なぜなら、『思考法』で解決できる

同じ人が同じように働いたとしたら、置かれた環境によって成果が異なるということです。だからポジショニングが重要だと言っています。

どの環境に身を置くかで将来が変わってきます。
ポジショニングが非常に重要です。

任天堂の株主総会で、社員を尊重する企業姿勢が伝わる

2013年の任天堂定時株主総会で、業績に伸び悩む同社に株主から「なぜリストラしないのか?」との質問がありました。当時の岩田社長の回答を下記に添付します。

私たちは、どうしても数年サイクルで山と谷のあるビジネスをしております。もちろん、谷のときにもしっかり利益を出せて株主の皆様にしっかり還元し、株価が高い状態が維持されるというのが理想で、そこを目指すべきであるということには全くそのとおりだと思っております。ただ、短期の業績を求めてリストラをいたしますと、会社で働く人たちのモラール(士気)は下がり、その人たちが不安に怯えながら作ったソフトが本当に世の中の人の心を動かせるのかということがございます。私は、今の事業構造のままで、これからの為替のトレンドや今後のプラットフォームの普及度合いから考えて、しっかりと利益を出せる状態に変えていくことができると思っております。もちろん、無駄な経費を削減し、効率的な方法を追求するのは当然です。また、世の中ではリストラとして「たくさんの人の首を切ることによって業績を回復させる」ということもよく言われますけれども、任天堂では、それぞれの分野の社員が、それぞれの仕事の中身で貢献をして今の全体としての姿がありますので、その一部だけを取り出して「会社(の業績)が厳しいので会社を去ってほしい」とするのは、長期的に当社の力を強めることにならないと思っております。あくまで無駄な経費を削減し、より効率的な運営をするという方向性で、費用に見合った成果を出していきたいと考えております。

任天堂 2013年6月27日(木) 第73期 定時株主総会 質疑応答
https://ww
w.nintendo.co.jp/ir/stock/meeting/130627qa/03.html

この時の岩田社長の発言が社員の心に火をつけたのかどうかは分かりませんが、今の任天堂は完全に右肩上がりの超優良企業です。業績に加え企業姿勢を鑑み、私たちは任天堂のような環境にポジションを取るために思考を働かせることが大事だと思うのです。たとえ一時的に業績が落ち込んだとしても、雇用が担保されていれば社員は奮い立ちモチベーション高く働けます。社員にとって雇用の担保は何よりもありがたく、安心できる環境だからこそやる気に満ち溢れると思うのです。
逆に、ポジショニングの見極めを怠ると、ブラック労働の環境下に晒されたり悲惨な処遇に直面する恐れがあるので要注意です。

転職できる人間がそれでも転職しない会社が最強

社員を使い捨ての奴隷と捉えるのか、最も大切なステークホルダーと捉えるのか、当事者である社員は会社の姿勢には敏感なので直ぐに察知します。企業が持続的発展を遂げるために、社員との向き合い方はどうあるべきかを黒岩氏はこのように述べています。

転職しようと思えばできる人がたくさんいる組織と、転職したくてもできない人間、それどころか今の会社にしがみついて足を引っ張るような人間だらけの会社。どちらの会社が強いと思う?
強い会社というのは普通の発想と逆なんだよ。いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社。それが最強だ。そんな会社だけが今の時代を生き残れる
従業員を大切にしない、足の引っ張り合いをする会社が大きくなることに意味はあるのか?たとえるなら、腐ったミカンが腐ったミカンを増やしているようなものだ

私たちがポジショニングを取るべき理想的な企業は数少ないと思います。しかし、企業が一個人を選ぶように、一個人も企業を選ぶ権利があります。企業選びは安易に妥協しないようにしたいものです。
その前に、私たち自身が、いつでも転職できるような人間になるように、自己研鑽に励む必要があることを最後に記したいと思います。

いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社が最強。なので、私たちはいつでも転職できる人間になる必要があるのです

コメント