会社員にとって、会社を通した資産形成の2台巨頭は「従業員持株会」と「企業型確定拠出年金」ではないでしょうか。両制度共に積み立て方式になっているので、知らない間にそこそこお金が貯まっているのが魅力です。しかし、会社に言われるがままに入会して、これらの制度をあまりよく理解していないという会社員は少なくないと思います。
私は両方に入会しており、氷河期世代の会社員としては、これらの制度には老後資産形成に一役買ってもらわねばならないと思っています。
「持株会」と「企業型DC」の運用の仕方について2回に分けて記します。まず1回目の今回は「従業員持株会」です。
持株会の株式を売却して制裁人事を食らったという話を耳にしたことがあります。持株会の運用変更については、企業文化や風土、暗黙のルールなどを十分考慮したうえで検討されることをお勧めします。
持株会加入率は4割 保有金額は200万円 奨励金が最大の魅力
東京証券取引所が「従業員持株会状況調査結果」を開示しています。最新の2018年度は、上場企業3,206社が対象です。下記は主な調査結果です。
- 時価総額に占める持株会の株式保有金額比率:0.96%
- 従業員の持株会加入率:38.96%
- 持株会加入者 1 人当たりの平均保有金額:197.7 万円
- 奨励金支給:全体の96.6%
- 奨励金比率:平均8.511%
2018年度従業員持株会状況調査結果の概要について
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/tvdivq0000001xhe-att/employee_2018.pdf
従業員にとって持株会のメリットは何と言っても「奨励金」です。ところがこの奨励金を勘違いして都合良く捉えている人もいるのではと思うのです。
奨励金はその時の積立だけに加算。保有金額増で奨励金の価値は低下
持株会の奨励金は、その時点の積立に加算されるものです。上記のように奨励金比率を8.5%と仮定した場合、ある月に1万円積み立てたら850円加算され、その月の積立額が1万850円になるということです。
持株会の仕組みを理解していない人の中には、奨励金を配当と同じように保有金額全体にかかると勘違いしている人がいるのではないかと思うのです。保有金額全体が100万円なら奨励金はその8.5%の8万5千円、200万円なら17万円が毎年もらえるというようにです。これは完全に間違いです。奨励金はあくまでも、その時点の積立にしか加算されません。
ということは、保有金額全体が大きくなればなるほど奨励金の妙味が薄くなってくるということです。月1万円積み立てたとすると、年間の奨励金は850円×12ヵ月=10,200円となります。
保有金額全体が100万円の場合、奨励金利回りは1.02%です。
保有金額全体が200万円の場合は、奨励金利回りは0.51%です。
このように、保有金額全体が大きくなればなるほど奨励金の価値は低下するのです。このからくりは、持株会の運用を検討する際の大きな材料となります。
株価+奨励金+配当の合計利回りとインデックスの利回りを比較する
老後資産形成はインデックスファンドの積立投資が主流です。20年間の収益が非課税となる「つみたてNISA」は私のような氷河期世代にとって、うってつけの制度です。私もつみたてNISAで運用しています。
老後資産形成を目的に持株会を運用する場合、株価+奨励金+配当の合計利回りがインデックスファンドと比較して優れているかどうかが運用手段を決めるポイントとなりそうです。
私は約10年間持株会で積み立てをしており、過去に一度だけ毎月の積立額を増額したことがありますが、株の売却は一度もありません。そこで、効率的に老後資産を形成するためには、このまま淡々と積み立てするだけで良いのかと疑問がわき、検証することにしたのです。
私の持株会運用の状況は下記のとおりです。(2021年3月末予想)
- 株価平均利回り:0.2%
- 奨励金利回り:1.3%
- 配当利回り:1.8%
- 合計利回り:3.3%
このまま積み立てを続ければ保有金額全体が膨らみ、奨励金利回りはさらに低下。それに伴い合計利回りも低下します。今の合計利回り3.3%は、インデックスファンドに資金を移動するに値する数字だと捉えています。私は自分が投資するインデックスファンドの将来利回りを5%と想定しています。3月末の権利確定日を迎えたら、持株会を売却し、インデックスファンドを購入することを検討します。

平均利回りを天秤にかけて運用を検討
持株会は継続。今後の運用は合計利回り4%で売却
権利確定日後、持株会の株式は目一杯売却するつもりですが、この先も持株会での積み立ては継続します。1年単位で見た場合、奨励金と配当を合わせた利回りが10%を超えるので、この恩恵は最大限享受した方が良いのです。
上に書きましたが、私は自分が投資するインデックスファンドの将来利回りを5%と想定しています。ですので今後は、持株会の合計利回りが4%に低下したタイミングで株式を売却していきたいと思います。
持株会の株価の上昇が永続的にインデックスファンドを凌駕するのであれば、何もせず持株会で放置しておけばよいのです。しかし、個別株なので変動が大きく、将来株価が全く読めません。
現時点では、長期投資においてはインデックスファンドが最も安心できます。将来リターンにも大きく期待しています。
年利5%の20年間年金終値係数は、33倍にもなります。つまり、毎月1万円積み立てをすれば、20年後には400万円になります。ちなみに貯金なら240万円です。
そうしたわけで、私は持株会の合計利回りが4%になったタイミングで売却し、想定利回り5%のインデックスファンドに資金移動して運用するというスタイルにしたいと思っています。
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